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痴娯の家

有馬の人形筆

2007年11月号

月刊「痴娯の家」

玩具には「からくり人形」という分野があります。糸を引いて動力仕掛けにしたり、ゼンマイ、水銀、水、砂等の力を利用して動かす自動機械の人形です。江戸時代中期の大阪の竹田出雲のからくり人形芝居は大流行しました。

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写真は神戸の有馬温泉に伝わる「人形筆」です。これも素朴ながらからくり人形の一種です。字を書こうと穂先を下にすると軸に仕込まれた豆人形が筒先から顔をだし、筆を横にすると隠れます。五色の絹糸の光沢が美しく、郷土玩具の中でも卓越したアイデアを具体化したものといえます。

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豊臣秀吉も有馬温泉湯治のさい、奥方ねねへのみやげにしました。この人形筆誕生のいわれとしておもしろい話が伝わっています。「昔習字のきらいな若君のためにこれが考案されました。この若君は人形が飛び出す筆のおもしろさにひかれて、字を習うようになりとうとう能書家として世に名をなしました。」

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筆を具現化した着想は他になく、すずりを人形に型どった京都嵯峨の人形すずり、奈良彫人形を墨で作った人形墨とならんで書道の三つ物玩具に数えられています。この3点がそろって近畿地方にあるのも、やはりこのあたりが文化の中心だったからでしょうか。

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からくり人形の代表的なものとしては他に東京王子の暫(しばらく)狐、金沢の米食い鼠などがあります。いずれご紹介します。